色彩楽園

涙の11月〜言い尽くせない感謝を込めて

 11月最後の月曜日、長尾こころのクリニック院長長尾圭造先生がご逝去されました。長尾先生に初めてお目にかかったのは、阪神大震災の直後です。絵によるケア活動を報告したことがきっかけで、それ以来、ずっとお世話になってきました。
 1999年にコソボ紛争が激化し、日本に避難してきた家族のメンタルヘルスケアの際には、3人の子どものために「絵によるケアを用意したい」とお声をかけていただき、2年間のケアを実施しました。そのときの先生の「この人たちを治せなくて、何が精神科医やねんって自分に対して思ってる」という言葉は今も忘れることができません。
 
 わたしのアートセラピーメソッドを誰よりも理解してくださったのが長尾先生でした。よく「藤井先生のやり方がいちばん納得できる」とおっしゃっていて、色彩楽園の活動も設立したときから応援してくださいました。長尾こころのクリニックでのアートセラピーも常に「診療にとても役立っている」と言ってくださいました。
 また、「みんなの救急法推進プロジェクト」を立ち上げて救急法講座を始めると、「何かあったときには助けたいと思う、この精神が一番大切なんです」と励ましてくださいました。
 

 先生の遺作となった<エビデンスに基づく学校メンタルヘルスの実践 自殺・学級崩壊・いじめ・不登校の防止と解消に向けて>は、学校という場で子どもの心の健康を守る活動を行うときの注意点を実践例を含めて具体的に解説した本です。
原稿を拝見した時には「学校の先生たちのバイブルになるに違いない!」と思いました。幸運にもカバーデザインのご依頼があったので、イメージを伺うと、「学校が楽しいことです。何があっても、健康志向。友達との協調性。先生への相談。克服したいのは、クラスでの孤立、いじめ・嫌がらせ、学級崩壊、家庭での養育不良の学校での克服。」とおっしゃいました。
収録されている実践例は世界初の試みで、今苦しんでいるすべての子どもの光となると思っています。先生のお好きなローズレッドでデザインしましたが、残念ながら、この御著書ができあがったその日に先生は旅立たれました。
 
 先生の突然の訃報は7月の豪雨で被災した愛媛県の子どものこころのケアのために向かった大洲市でアート・プログラムの準備中に受け取りました。動揺しましたし、津市に向かわねば、とも思いましたが、被災した子どもたちにわたしができることをやり遂げないといけない、いつも子どものために力を尽くされていた先生なら、それを願っていらっしゃるのではと思い、子どもたちのケアをやりきって帰ってきました。
 
 長尾先生には数多くの貴重な経験をさせていただきましたし、長い間ご指導いただきました。
 先生、どうぞゆっくりと休んでください。空の上で大好きなお酒もたくさん召し上がってください。
言い尽くせない感謝を込めて、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
藤井昌子
 
エビデンスに基づく学校メンタルヘルスの実践 自殺・学級崩壊・いじめ・不登校の防止と解消に向けて
長尾圭造 著 
三重県医師会学校メンタルヘルス分科会編
カバーデザイン 藤井昌子
本体2,500円+税
2018/Dec/12
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